食読のすすめ

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理系/文系の壁をなくすには―『理系バカと文系バカ』

竹内薫著, 嵯峨野功一構成『理系バカと文系バカ』(PHP新書

 

 刺激的なタイトルにある通り、本書では「理系」に偏りすぎた「理系バカ」と「文系」に偏りすぎた「文系バカ」の愚鈍さを指摘した上で、そんな「理系」/「文系」の枠にとらわれない「文理融合」の人になるための方法が書かれている。

 正直に言ってしまえば、内容自体に目新しさは特にない。「理系バカ」と「文系バカ」にこれではまずいよと危機感を煽った上で、申し訳程度に「文理融合」の人になるための方法が紹介されている。この紹介されている方法も、「理系バカ」はフィクションを、「文系バカ」は科学書をもっと読めという最もらしいが何の新鮮味もない方法であり、そういった点では「俗本」の域を出ない。

 では、なぜ私はこの本を手に取ったのだろうか?それは著者が竹内薫さんだったからである。竹内薫さんは、理学の博士号を取得した後にサイエンスライターとして一般の人に科学を広める活動を行っており、その著作には竹内さんにしか書けないとも思える名作が数多ある。本書に準えると、いわば「文理融合」のお手本のような方であり、そんな方が説く「文理融合」の重要性と方法が気になったのだ。結果は少々残念だったが、、。

 だが、悲しんでばかりもいられない。これも読書なのだ。それに、巻末に記載されている「理系ワールドを楽しむオススメの10冊」は非常に良いブックガイドとなっている。その中でも、R. P. ファインマン著, 大貫昌子訳『ご冗談でしょうファインマンさん(上・下)』(岩波現代文庫福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書は非常に読みやすいため、是非一度読んでみることをおすすめする。また、竹内薫さんの著作では『99.9%は仮説』(光文社新書を、科学の考え方を知れる1冊としておすすめする。

 本書のような理系/文系の分離とそれに伴う啓発本は多く存在するが、現在のような理系/文系にわかれるまでの歴史的過程は、隠岐さや香著『文系と理系はなぜ分かれたのか』(星海社新書)に詳しく記載されているので、興味のある人はそちらを参照するとよいだろう。